基調講演 「元気な関西経済!」
大阪学院大学企業情報学部教授 國定浩一氏
ICTと独自のアイデアで活路を開け
日本銀行の企業短期経済観測調査(短観)などを見ると、日本のマクロ経済は堅調に推移しているように思える。景気の拡大期間も、戦後最長だった「いざなぎ景気」を超えた。
しかし、景気の回復を実感している人がどれほどいるだろうか。最近では、自分の生活レベルを「中の下」あるいは「下」と考えている人が増えているという。そんな実感を裏付ける数字も報告されている。
例えば国税庁の調べによると、民間企業に勤める人の昨年一年間の平均給与額は約435万円。前年より約2万円減り、9年連続の減少となった。年間給与額が200万円以下だった人も4年前より170万人増え、全体の約23%に達したそうだ。
また厚生労働省によれば、2006年度の生活保護世帯数(月平均)は約1,075,800世帯。前年度より3.3%増加し、過去最高を更新した。被保護者数の増加傾向にも歯止めがかからず、約151万人に達している。
マクロ経済が拡大傾向にあるといわれる一方で、つらい思いをしている庶民は増えている。私の身近にいる中小企業の経営者や自営業者に話を聞いても、「景気が良くなった」という人より、「悪くなった」と感じている人の方が多い。
最近では中小企業の倒産件数が増加し、「中央」と「地方」の格差も拡大している。関西は「地方」であり、中小企業も多い。関西の「地べた」の経済は、依然として先行き不透明な状況が続いているというのが実態だろう。
しかし、希望の光はある。どんなに景況が厳しくても、成功を収めているベンチャー企業や、古い体質を改善して息を吹き返した中小企業は数多く存在する。こうした企業に共通するキーワードこそ、「ICT(情報通信技術)」だ。
2001年、関西経済連合会など在阪経済団体が、ICTを活用して関西経済の活性化を目指す「関西IT戦略会議」を発足させた。同会議はICTのメリットに対する認知度の向上を図るため、ICTを活用して成功を収めた企業を表彰する「関西IT活用企業百撰」をスタート。最優秀、優秀企業を含む80社が第一回の受賞企業に選ばれた。
最優秀企業に輝いた2社の事例を見てみよう。
まず、大阪市を拠点にネジを扱うある卸売業は、出荷作業の効率と精度を向上させる物流システム、在庫適正管理システム、3,000社におよぶ得意先の顧客満足(CS)の向上を図る営業システムを構築。15万アイテムもの在庫を適切に管理し、多品種少量の注文にも対応できるようにした。また、1日8,000件に上る注文を迅速に処理し、即日出荷を実現。CSを重視した営業システムで、約百社の新規顧客を獲得したという。
一方、滋賀県に本拠を置くある菓子製造小売業は、インターネットによる和菓子の通信販売を展開。ネット販売専用の物流センターなどを活用し、受注から最短20分で出荷できる体制を整えた。その結果、注文日翌日の商品配達が可能になり、2001年度は4千万円の売り上げを達成したという。

ICT以外にも共通するキーワードがある。「独自のアイデア」だ。ある大学教授の言葉に「本業のまっただ中での新規事業」とあるが、自分の得意分野で新しいアイデアを出し、勝負していくことが大切だ。
例えば、ある青年が「タイガース・スーツ」というアイデアを思いついた。外見は普通のスーツだが、裏地にタイガース柄の布地を使用している。阪神ファンのサラリーマンが昼間でも身に付けられるアイテムを……という発想から生まれたアイデアだ。
当時、彼はアパレル企業に勤めており、会社にアイデアを提案した。だが通らない。そこで独立し、実際にスーツを製作。インターネットで販売したところ、大成功を収めた。今ではブレザー、コート、ネクタイなど商品ラインアップも充実している。
自分の得意分野で「独自のアイデア」を出し、ICTを活用して計画を実行・継続していく――。これが企業を成功に導くキーワードであり、「元気な関西経済」を実現する鍵だろう。








