特別セミナー 「ICT時代の経営者の条件」
京都大学経営管理大学院・大学院経済学研究科 教授 末松千尋氏
「インターフェース」で経営を革新
インターネットの普及やウェブ2.0の登場など、発展を続けるICTは「インターフェース」に劇的な変化をもたらしている。ICTにより進化するインターフェースを的確に管理すれば、より効率的で柔軟な経営を実現することが可能だ。
インターフェースは人間と人間、人間とコンピューターの接点に存在する一定のルール。それは業務のやり方を設計したものであり、誰にでも理解できる方法で記述され、円滑で無駄のない確実な業務の遂行を可能にするものだ。
インターフェースには、「上下」と「左右」がある。上下のインターフェースは上司と部下の間などにある共通のルールで、マニュアルなどがこれに当たる。一方、左右のインターフェースは部門間や個人間などに存在し、異なる部門や個人が連携して業務を進める際に役立つ取り決めなどを指す。
また、インターフェースには「アドホック(都度対応)」的なものと「固定化」されたものがある。企業には様々なインターフェースが存在するが、常に同じ作業であり、誰がやっても変わらない定型的な業務は、初期コストを払っても固定化した方が将来的なコストを抑えられる。ICTを導入し、業務の効率化を図るという発想がこの最たる例である。
インターフェースの固定化は、自由に使える時間を増やすことにつながる。その分、より複雑で創造的な業務に力を注ぎ、製品力、技術力、顧客満足などさらなる向上を目指すことが大切だ。
個々のインターフェースを確実に機能させるためには、矛盾が生じないよう基本方針を定め、経営システムを設計し、インターフェースを遵守・活用できるよう教育を行う必要がある。導入後はきちんと機能しているかモニタリングし、問題があれば改善する。この一連のサイクルを継続していくことが重要だ。
多くの企業は部門ごとに責任と権限を定め、事業計画を策定し、決裁権限や人事考課、生産計画、在庫管理、工程管理、品質管理など、様々なプロセスを構築している。これらをうまく機能させるためには、個々のプロセスをインターフェースとしての観点からとらえなおす必要がある。

例えば米国シリコンバレーでは、部品、製品がどういった経路を流れ、どの部署が何を担当し、誰が何の責任を持つのか、壁一面にワークフローを張り付けてインターフェースの整合性を確認。実際に実行して改善点があれば修正する作業を繰り返し、生産性を高めている。こうした作業を各部門、企業全体で行い、最適化していくことが大切だ。
その上でICTを導入すれば、部門ごとの業務効率向上はもちろん、設計、製造、販売など異なる部門間で互いの情報を活用し、全社的により円滑な業務が可能になる。
米国シリコンバレーではその他、企業間の情報共有や意思決定などにICTを活用。仮想企業体運営(ベンチャーコーポレーション)も実現し、部品メーカー、ベンチャーキャピタル、コンサルタント、各種アウトソーサーなどを一つの企業体のように機能させている。
こうしたシステム的な考え方に対しては、「非人間的」「あらゆるものを硬直化させる」「画一的管理を強化する」などの誤解も多い。
インターフェースは、あくまで相互理解・協調活動のためのインフラである。すべてを規定しようとする「マニュアル発想」ではなく、最も定型的な作業を明示的に取り決めることで業務の効率化を実現し、全体最適を可能とさせるものだ。
従来の日本企業の多くは「同質性指向組織」であり、従順さや感情を評価する傾向にあった。それは規定路線における大量生産が求められ、安定的な高度成長の時代にはマッチしていたかもしれない。しかし、変化のスピードが速く競争が激しい現代のビジネス環境には、なじまなくなっていると思う。
インターフェースを的確に管理すれば、人材は自らの独自性、創造性を大いに発揮しながら、同時に全体としてきちんと統合された「多様性指向組織」を構築できる。インターフェースの有用性を理解し、経営環境の変化に柔軟に対応できる組織づくりを目指すことが、ICT時代の経営者の条件といえよう。








