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地震先行現象検出技術の確立に向け、京都大学と共同研究を開始 〜1時間前から20分前の大規模地震検知に向けて
2017年7月3日
株式会社ケイ・オプティコム
株式会社ケイ・オプティコム(以下ケイ・オプティコム、代表取締役社長:藤野 隆雄/本社:大阪市北区)は、地震による被害軽減・企業の事業継続確保を目指し、2017年6月1日より2020年3月31日まで、国立大学法人京都大学(以下京都大学、総長:山極 壽一/京都市左京区)と、大規模地震発生前における地震先行現象検出技術の確立に向けた共同研究を実施いたします。
昨今、内閣府中央防災会議などにおいて、今後30年以内に70%以上の確率で南海トラフ巨大地震(南海・東南海・東海)や首都直下型地震などの大規模地震が発生すると想定されており、地震における防災対策のあり方が活発に議論されています。そのような議論の中で、地震学だけでなく、統計学や物理学を用いた地震先行現象研究が注目されつつあります。
このような先行現象研究の一つとして、京都大学の梅野健教授(以下梅野教授、京都大学大学院情報学研究科)の研究グループは、複数のGPS衛星観測局から地震発生前のデータのみを用いて電離圏電子数異常を捉えるデータ解析手法を開発し、東北地方太平洋沖地震や熊本地震の発生前においても電離圏の異常を捉えられることを理論づけ、1時間前から20分前の大規模地震検知(マグニチュード7以上)の可能性を示しました。
ケイ・オプティコムは、この大規模地震における先行現象検出技術が実用化されることにより、家屋倒壊や津波といった危険からの早期避難のみならず、例えば病院での手術の中断、大型貨物クレーン作業や高所作業の中止など、地震被害の未然防止に対してより早い手立てが可能になると考えています。
この大規模地震の先行現象検出技術の確立に向け、ケイ・オプティコムは、以下のとおり京都大学と共同研究に取り組みます。
- 解析手法を高度化(GPS以外のデータを活用するなど)し、電離圏異常との分析が未着手である過去大規模地震を解析することによる、大規模地震と電離圏異常との相関関係の立証
- ケイ・オプティコムの通信局舎および京都大学施設へ受信機を設置し、リアルタイムのGNSSデータ(GPS、GLONASS、Galileo、準天頂衛星などの衛星測位システムの総称)を解析することによる、独自観測網の実現可能性の検証
- 京都大学施設に電離圏の電子数など物理的な情報を取得可能なイオノゾンデ※受信機(斜入射観測装置)を設置することによる、新たな観測手法が地震先行現象検出に資するかの検証
尚、共同研究で得られたデータは、一定期間経過後に公開するなどして、第三者による本先行現象検出技術の効果を科学的に検証ができる様にする予定です。
※:電離圏の状態を観測するためのレーダーの一種。低い周波数の電波から、周波数を上げながら、パルス状の電波を発信し、受信までの時間差から電離圏の見かけの高度を測定
<共同研究イメージ>
本共同研究による検証・立証を経て、ケイ・オプティコムはクラウド基盤や通信網などのリソースを活用し、自治体を介した地震先行現象情報の配信や、スマートフォンなどによる直接的な情報の通知などを担っていくことを目指します。今後、日本のみならず海外への展開も視野に入れながら、本共同研究を含め情報通信技術を活用した地震における防災事業に取り組んでいきます。
以上
<梅野健教授プロフィール>
梅野 健/ウメノ ケン/Ken Umeno
情報学研究科/数理工学専攻数理物理学講座/教授
理化学研究所を経て1998年4月1日郵政省(現総務省)入省。
2003年8月26日に株式会社カオスウェア設立同取締役(2012年3月31日まで)。2005年理化学研究所次世代移動体通信研究チームリーダー(兼務,2010年3月31日まで)。2004年4月1日―2012年3月31日独立行政法人情報通信研究機構主任研究員を経て、2012年4月1日京都大学大学院情報学研究科数理工学専攻教授。
(参考URL)
大地震発生直前の電離圏異常を検出 ―マグニチュード7以上の大地震の直前予測の可能性―
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2016/documents/160930_1/02.pdf
熊本地震発生直前にも電離圏異常が起きていたことを発見
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2016/documents/170224_3/01.pdf