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#02 命を守り、被害を防ぐ 地震予測技術の実用化を目指す

通信技術を用いた京都大学の研究に注目

“わずかな時間が持つ力”を見いだすことが、このプロジェクトのテーマといえるだろう。オプテージは2017年6月から2020年3月まで、京都大学と大規模地震発生前における地震先行現象検出技術の確立を目指した共同研究を行うことを発表した。この技術は、複数のGPS通信衛星観測局から送られるデータをもとに電離圏に存在する電子数の異常を検知するものであり、実用化されれば1時間から20分前に大規模地震(マグニチュード7以上)の発生を予測するというものだ。
現在の地震検知技術は、地震計に記録される波形に基づいて行う方法がメインだが、近年はこうした統計学や物理学を用いた地震先行現象研究が注目されている。今回の共同研究では、大規模地震直前においての電離圏電子数異常を多角的・複合的に検証していき、本技術の実用化を目指している。地震被害は、あと数分、あと数秒はやく地震発生が分かったら命が助かった、あるいは被害を少なくできたというケースが少なくない。京都大学との共同研究は、こうした被害を防ぐために非常に有効だと考えられる。

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発想の転換がプロジェクトのきっかけに

プロジェクトリーダーの森は事業開発推進室に配属が決まった当初、ブライダルのサービスを立ち上げたいという想いがあった。経済的な事情で式を挙げない人が多いと感じていたことが動機だった。しかし実際に式を挙げていない友人に話をしたところ、「相手の立場に立って考えていない」と予想外の反応が返ってきたという。
「式を挙げない理由は経済的なことだけでなく、環境も大きな要素だったんです。自分の視点から相手の立場を推し量っていたことに落ち込みました」と森は当時を振り返る。しかしそれがターニングポイントになった。「当事者視点に立ったサービス発想とは反対に、自分(自社)の課題を解決することで、多くの人の力になれる事業はないかと発想がシフトしていきました」(森)。
このように発想を転換した時に、京都大学 情報研究科の梅野教授の研究に出会った。地震は日本人にとっても、通信インフラ会社にとっても喫緊の問題であり、防災対策は大きな課題である。しかも梅野教授は地震学ではなく、情報通信のエキスパート。弊社と通じるものがあり、きっと一緒に何かができる。そう考えた森はすぐに梅野教授に連絡をとった。

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お互いの強みを融合した
プロジェクトに発展

梅野教授と話をしたところ、京都大学も開発した技術の実用化を目指しており、それを実現できる通信インフラ企業との協業を考えていた。まさにお互いの強みを生かすことのできるマッチングだった。
共同研究では主に技術研究は京都大学が行い、サービス内容を含むプロジェクト全体の仕組みづくりや管理、コーディネートを弊社が担うことに。プロジェクトは3年計画で、年度毎に“やるべきこと”と“目標”を設定。開発した技術を社会に役立てるためには、サービスを継続して提供することが重要である。「そのために技術開発はもちろんのこと、今後収益を得るための仕組みづくりが重要となってくるだろう。」と森は語る。

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産官学の連携体制をつくり、
効果的な情報提供に取り組む

「プロジェクトは計画どおりに進んでいる」と話す森。現在、電離圏の情報は国土地理院が一定期間後に公開するデータのみを活用しているが、今後は弊社の局舍に受信機を設置して、リアルタイムに情報を取得する環境を構築予定だ。また、データ解析も自社で行えるよう、技術スタッフが京都大学の研究グループを訪ね、ディスカッションを行っている。
また国や自治体にもアプローチして産官学の連携体制をつくり、多くの人や企業に対して効果的に情報を届けたいと考えている。国内で実用化された後は、海外展開も視野に入れている。すでに森は梅野教授とともに関係者にプレゼンを行い、手応えを感じている。
「私が当初考えていたブライダルのサービスは“人を笑顔にする”ものでしたが、今取り組んでいるのは“人の笑顔を奪わない”ためのプロジェクトです。どちらも目的は同じだと思っています」、そう語る森の表情は笑顔であふれている。

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このプロジェクトにご協力いただいているパートナーさま

学生時代は、自分の専門分野にこだわらず、『自分の価値観が揺らぐ程・世界は広い』ということを実感できることを経験し、さまざまな価値観を持っている人とできる限り会うべきと考えています。私が勤務している京都大学大学院情報学研究科・工学部情報学科の学生にも、常にその様に伝えています。現在進めているオプテージとの共同研究は、通信インフラを支えている企業が、新規事業として大地震の予測(物理に立脚する新しいデータサイエンス=私の研究分野)、そして防災にもつなげようという志が、大きなものに感じましたのでスタートしました。なんでも大きなものが良いとは限りませんが、志だけは大きければ大きいほど良いと私は思います。

京都大学大学院情報学研究科数理工学専攻教授
梅野 健さま

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